年収の壁「103万円」から「160万円」へ!令和7年度税制改正のポイントを解説
クレア総合会計(東京都台東区上野)の税理士 岩崎です。
「年収の壁」という言葉を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか?
中でも「103万円の壁」は、パート・アルバイトなどで働く方々にとって、大きな関心事でした。経営者の皆様にはパートやアルバイトの方から「扶養の範囲内で働きたいです。」と言われることが多い人も多いのではないでしょうか?
実はこの年収の壁。約30年間も動いていませんでした。その間も最低労働賃金は上がっていたので、「最近のパートさんはあんまり働けないなぁ」とご年配の社長様は感じていらっしゃったのではないでしょうか?
この度、約30年の沈黙を壊して、令和7年度の税制改正により、この「103万円の壁」が「160万円の壁」へと引き上げられることになりました。
本記事では、この改正の背景と具体的な内容をわかりやすく解説します。
所得税に関する改正のポイント
今回の改正で、所得税の課税ラインが大きく変わることになります。
注目すべきは、給与所得控除と基礎控除の見直しです。
● 給与所得控除の引き上げ
従来、給与所得控除の最低額は55万円でしたが、改正により65万円へ引き上げられました。
これにより、年収190万円以下の方については、所得控除の恩恵がより大きくなります。
● 基礎控除の見直し
さらに、基礎控除も10万円増額され、合計所得金額が2,350万円以下の方については、48万円から58万円に。
加えて、特例措置として最大37万円の上乗せ控除が設定されました。
この特例は、合計所得金額が132万円以下の場合には恒久的に適用され、それ以外は令和7年・8年の2年間限定の措置です。
「160万円の壁」とは?
控除額が増加した結果、給与所得控除65万円+基礎控除95万円(最大)=160万円となります。
このため、「103万円の壁」は実質的に「160万円の壁(期間限定)」へと引き上げられました。
つまり、年収160万円以下であれば、所得税がかからないケースが多くなるということです。
これにより、特に扶養の範囲で働いている方にとって、働く時間や日数の選択肢が広がる可能性があります。
扶養控除・配偶者控除など「他の壁」もどう変わる?
所得税の改正に伴い、扶養控除や配偶者控除などの「年収の壁」にも変化があります。
● 配偶者に関する控除の変化
| 年収の壁 | 改正前 | 改正後 |
| 配偶者控除の適用限度 | 103万円 | 123万円 |
| 配偶者特別控除の満額適用限度 | 150万円 | 160万円 |
| 配偶者特別控除の適用上限 | 201万円 | 201万円 |
● 扶養親族(例:大学生の子)の「特定親族特別控除」
今回の改正では、学生アルバイト等の「働き控え」を防ぐ目的で、特定親族特別控除が新設されました。
| 年収の壁 | 控除内容 |
| 123万円超 | 特定親族特別控除が適用可 |
| 150万円超 | 満額適用(63万円)不可に |
| 188万円超 | 控除対象外に |
住民税の「年収の壁」も10万円アップ
住民税においても、給与所得控除が55万円→65万円に引き上げられます。
これにより、住民税がかかり始める年収ラインが100万円から110万円に変更されることとなります。
※ただし、住民税の課税基準は自治体により異なるため、個別確認が必要です。
社会保険の「年収の壁」は現時点で変更なし!
社会保険に関しては、今回の税制改正と連動した変更は現時点(2025年4月21日)では行われていません。
社会保険料は所得税や住民税よりも高額のため、超えると手取りの逆転現象を起こすので、弊社で「扶養内で働きたい」というスタッフさんにはこの社会保険の壁を越えないことを進めています。
| 年収の壁 | 内容 |
| 106万円の壁 | 従業員51人以上の会社に勤めると厚生年金・健康保険の加入義務が発生 |
| 130万円の壁 | それ以外の会社に勤めると、本人が国民年金・国民健康保険に加入する必要あり |
なお、2026年には、年収106万円の要件が撤廃
2027年には企業規模(51名以上)の要件が撤廃
と変更があります。
今後、調整される可能性もあるため、引き続き動向をチェックしておくと安心です。
適用時期に注意
- 所得税の新ルールは:令和7年分(2025年分)から適用
- 住民税の新ルールは:令和8年度から適用
- 源泉徴収(給与からの天引き)に反映されるのは:令和8年分から
→ 令和7年は年末調整で調整されます。
おわりに
今回の改正は、働く世帯や扶養内で働く方にとって、「壁」が緩やかになる大きな転換点です。
これまで収入を調整していた方も、今後は少し働き方を見直してみる余地が出てくるかもしれません。
ただし、税制や社会保険制度は複雑で、家庭ごとの事情によって有利・不利が異なることも。
迷ったときには、お気軽に税理士までご相談ください。
