インボイス制度における「少額特例」の適用期間とは?税理士が解説

【相談】インボイスの少額特例っていつまで使えますか?

岩崎先生、こんにちは。
夫がいつもお世話になっております。
(旦那さんは個人事業主で、奥様は経理を手伝っておられます。)

現在、インボイス制度が始まってからというもの、請求書の管理や保存について気を配っているのですが、その中でいわゆる「少額特例」という制度について疑問があります。

特に、「1万円未満の支払いであれば、インボイスがなくても帳簿だけで仕入税額控除が受けられる」という話を聞いたのですが、この制度の適用期限がいつまでなのかが分かりません。

令和11年以降の取引も見据えて、事前に確認しておきたいと思い、今回ご相談させていただきました。

【税理士の回答】

こちらこそいつもお世話になっております。
ご相談いただきありがとうございます。

いわゆる「少額特例」とは、インボイス制度に関連する経過措置の一つで、一定の条件を満たす小規模事業者等について、税込1万円未満の課税仕入れについては、帳簿のみの保存で仕入税額控除を認める制度です。

この制度の適用期間は、令和5年10月1日から令和11年9月30日までとなっています。
したがって、令和11年10月1日以降の仕入れについては、この特例は適用されません。

それでは、制度の仕組みや背景について詳しく解説いたします。

解説

1.仕入税額控除の原則ルール

消費税は、売上にかかる「預かった消費税」から、仕入にかかる「支払った消費税」を差し引いて納税額を計算します。
この「支払った消費税を差し引く仕組み」が仕入税額控除です。

ただし、この控除を受けるには、原則として次の2点が必要です。

  1. 帳簿の保存
  2. インボイス(適格請求書)または簡易インボイスの保存

つまり、インボイスが保存されていない課税仕入れについては、原則として仕入税額控除は認められません。

※個人事業者の「課税期間」は原則として1月1日~12月31日です。


2.「少額特例」の内容と要件(経過措置)

この原則に対して設けられたのが、**「少額特例(少額仕入に係るインボイス保存免除)」**という経過措置です。

以下の要件をすべて満たす場合、1万円未満(税込)の支払については帳簿保存のみで仕入税額控除が可能となります。

少額特例の適用要件:

  • 対象期間:令和5年10月1日~令和11年9月30日
  • 対象事業者:以下のいずれかを満たす課税事業者
    1. 基準期間(※前々年)の課税売上高が1億円以下
    2. 特定期間(※前年1月~6月)の課税売上高が5,000万円以下
  • 対象取引:支払対価が税込1万円未満の国内における課税仕入れ
  • 必要書類:帳簿のみの保存でOK(インボイス不要)

この特例により、少額取引のたびにインボイスをもらう手間が軽減され、実務的な負担が緩和されるよう設計されています。


3.適用期限に注意!

ご相談の中心である「いつまで使えるのか?」という点ですが、

  • 特例の最終適用日は:令和11年9月30日まで
  • 令和11年10月1日以降に行う課税仕入れについては、インボイスの保存が必要になります。

つまり、令和11年分の消費税については、

  • 1月~9月:少額特例の対象(1万円未満の帳簿保存OK)
  • 10月~12月:少額特例は適用外(インボイス保存が必須)

となりますので、事業年度後半から対応を変更する必要があります。

まとめ:少額特例の適用と経理実務への影響

項目内容
制度名少額特例(インボイス保存不要の特例)
対象期間令和5年10月1日~令和11年9月30日
対象取引税込1万円未満の課税仕入れ(国内)
適用条件– 課税売上高が基準期間で1億円以下 または 特定期間で5,000万円以下
– 消費税免税事業者は対象外
保存書類帳簿のみでOK(インボイス不要)
留意点令和11年10月1日以降の取引は特例適用外