従業員用社宅を他市に設置した場合、法人市民税はどうなる?【税理士解説】
相談:社員のための社宅…法人市民税はどうなる?
私は、建設業を営む50代の経営者です。
最近、深刻な人手不足に悩んでおりまして、少しでも働きやすい環境を整えようと、福利厚生の一環で社員寮を用意することにしました。
このたび、会社(株式会社)の本店があるA市に隣接するB市に、従業員Cが住むための社宅を賃貸契約することになりました。
そこでご相談なのですが、この場合、B市に対して法人市民税(均等割)の納税義務は発生するのでしょうか?
ちなみに、B市にはこの社宅以外に支店や営業所、事務所といったものは一切設置していません。
税理士による回答!
ご相談ありがとうございます。
東京都台東区 上野にございますクレア総合会計の税理士、岩崎です。
今回のご相談内容についてですが、結論から申し上げますと、貴社にはB市への法人市民税(均等割)の納税義務は発生しないと考えられます。
この理由や背景については、次の【解説】で詳しくご説明いたしますので、あわせてご確認ください。
税理士による解説!
1.市町村民税における納税義務者の基本ルール
地方税法では、市町村民税の納税義務について、次のように定められています。
- ① 市町村内に住所を有する個人
→ 均等割額+所得割額 - ② 市町村内に事務所・事業所・家屋敷を有するが、住所を有しない個人
→ 均等割額のみ - ③ 市町村内に事務所または事業所を有する法人
→ 均等割額+法人税割額 - ④ 市町村内に「寮等」を有するが、事務所または事業所を有しない法人
→ 均等割額のみ - ⑤ 法人課税信託を引き受ける個人で市町村内に事務所または事業所を有する者
→ 法人税割額のみ
今回のご相談に関係するのは、特に④の「寮等を有する法人が均等割額の対象になるか」という点です。
2.「寮等」とは何を指すのか?
総務省の見解によると、「寮等」とは次のような施設を指します。
- 寮、宿泊所、クラブ、保養所、集会所など
- 法人が従業員の宿泊・慰安・娯楽などの便宜を図るために常時設けている施設
- 自社所有であるか賃貸であるかは問わない
一方で、単なる独身寮や社員住宅、つまり特定の従業員が居住するためだけに設けた施設は、「寮等」には該当しないとされています。
3.今回のケースにあてはめると?
今回のB市の社宅は、特定の従業員Cさんが居住するための住宅です。
また、B市内には貴社の支店や事務所、営業所などは存在していません。
この状況を総合的に判断すると、今回の社宅は「寮等」には該当せず、B市における法人市民税(均等割額)の納税義務は発生しない、という結論になります。
まとめ
今回、B市に設けられる社宅は、特定の従業員Cさん個人の居住を目的としたものです。
また、B市には支店や事務所といった事業拠点は一切存在しません。
このため、地方税法に基づく「寮等」には該当せず、貴社にB市での法人市民税(均等割額)の納税義務は発生しないと考えられます。
ただし、今後もし複数の社員が利用する施設を設けたり、B市内で事業活動を行うようなケースが発生した場合には、新たに法人市民税の納税義務が生じる可能性もあります。
状況が変わった際には、改めて専門家にご相談いただくことをおすすめします。
