前納保険料の払戻金に相続税はかかる?みなし相続財産の取り扱いを税理士が解説
【相談】
先日、父が他界し、生命保険会社から死亡保険金を受け取りました。
受取人は私で、父が契約していた生命保険の内容に基づくものです。
この保険契約では、父が保険料を前納(一括払い)していた期間があり、今回、その前納保険料の一部が未経過分として戻ってきたとのことで、死亡保険金と一緒に払い戻されました。
そこでご相談なのですが、
この前納保険料の払戻金(未経過保険料分)については、相続税の課税対象として扱うべきなのでしょうか?
死亡保険金と同じような扱いになるのか、それとも別の扱いになるのか…判断がつかず、悩んでいます。
【回答】
ご相談ありがとうございます。
東京都台東区上野のクレア総合会計 税理士 岩崎です。
このたびはお父様のご逝去、心よりお悔やみ申し上げます。
大切なご家族を亡くされ、お気持ちの整理もつかない中でのご相談かと存じます。
少しでもお力になれればと思い、お答えさせていただきます。
今回のご相談内容である「死亡保険金に付随して受け取った前納保険料の払戻金」についてですが、
結論から申し上げますと、この金額は相続税法上の『みなし相続財産』として、相続税の課税対象となります。
死亡保険金と同様に、お父様の死亡により生じた経済的利益であるため、相続税の課税対象とされる取り扱いです。
くわしい理由や取り扱いについては、次の【解説】でわかりやすくご説明いたします。
ぜひご参考になさってください。
【解説】
1.相続税の対象となる財産とは?
相続税法では、まず「被相続人の財産を相続または遺贈によって取得した場合」に、その財産に対して相続税が課されると定められています。
これが、いわゆる「本来の相続財産」と呼ばれるものです。
※「遺贈」には、亡くなった方が生前に契約していた死因贈与(亡くなることで効力が生じる贈与契約)も含まれます。
2.保険金なども課税対象になる「みなし相続財産」とは?
本来の相続財産のほかに、相続税法では以下のような財産も「相続や遺贈により取得したものと“みなす”」とされ、課税対象となります。
具体的には、
被相続人(今回はお父様)の死亡により支払われた生命保険金や損害保険金がこれに該当します。
そして、次の条件を満たす場合には、その保険金は「みなし相続財産」とされ、相続税が課税されます。
- 保険契約において、被相続人が保険料を負担していたこと
- 死亡時点までに払い込まれた保険料に基づく保険金であること
- 保険金受取人が、被相続人の死亡により金銭を受け取ったこと
つまり、「お父様が支払っていた保険料によって、あなたが保険金を受け取った」今回のケースは、典型的なみなし相続財産の対象といえるのです。
※なお、相続人が受け取る生命保険金には、非課税限度額(500万円 × 法定相続人の数)が設けられており、その範囲内であれば相続税はかかりません。
3.前納保険料(未経過分)の扱いも「みなし相続財産」に含まれる
保険金とあわせて支払われるものとして、以下のような金額も相続税の課税対象とされています。
- 剰余金(契約の利益分配)
- 割戻金(契約実績に応じた払い戻し)
- 前納保険料(未経過分の戻し金)
今回のご相談のように、保険契約で一括払い(前納)されていた保険料の一部が、保険金と一緒に戻ってくるケースもあります。
この払戻金についても、保険金と同様にみなし相続財産として相続税の課税対象とされます。
4.まとめ:相続税の計算には、保険金や払戻金も含まれる
今回の「前納保険料の払戻金」は、本来の財産ではなく、みなし相続財産として相続税の対象となる金額です。
ただし、生命保険金等には非課税枠の適用もあるため、実際に課税されるかどうかは、全体の相続財産の額や法定相続人の人数などにより異なります。
心の整理もつかぬ中、税金の手続きに追われるのは本当に大変なことです。
不明な点がある場合には、遠慮なく専門家へご相談いただければと思います。
【まとめ】
今回ご相談の「前納保険料の払戻金(未経過保険料分)」については、
お父様のご逝去を保険事故として支払われた保険金とあわせて受け取る性質上、相続税法上の“みなし相続財産”に該当し、相続税の課税対象となります。
ただし、生命保険金と同様に、相続人が受け取る金額については一定の非課税枠が認められていますので、すべてが課税対象になるわけではありません。
大切な方を亡くされた直後の事務手続きは大きな負担かと思います。
少しでも不安を解消できるよう、こうした税務上の整理を進めながら、必要に応じて専門家にも相談していきましょう。