不動産所得が赤字に…給与と損益通算できる?定年前のパート主婦からの相談に税理士が回答
◆相談◆
はじめまして。60歳を過ぎ、パートで働いております。長年勤めてきた職場も、そろそろ定年を迎えようとしておりまして、これからの暮らしを見据えて、少しでも収入の足しになればと、数年前に小さな賃貸用の不動産を購入いたしました。
ところが、今年は修繕費や空室などが重なってしまい、不動産の収支が100万円ほど赤字になってしまいました。その中には、購入時のローンの利息として支払った10万円も含まれております。
この赤字ですが、私のパートの給与と損益通算などできるのでしょうか? 税金のことはあまり詳しくなく、教えていただけると助かります。
◆税理士からの回答◆
ご相談ありがとうございます。上野・御徒町を拠点に活動しているクレア総合会計の岩崎と申します。
結論から申し上げますと、不動産所得の赤字分については、基本的にパート収入などの給与所得と損益通算が可能です。
ただし、今回の赤字のうち「借入金の利子10万円」については、損益通算の対象にはなりません。これは、住宅ローンなどで物件を購入した際の土地部分に対応する借入利子は、所得税の計算上、必要経費として認められないというルールがあるためです。
したがって、利子10万円を除いた90万円分の赤字については、給与所得と通算できる可能性があります。
確定申告をすることで、今年支払った所得税の還付や、翌年の住民税の軽減につながる場合もありますので、ぜひ申告を検討されると良いでしょう。
◆解説◆
1.所得税法上の損益通算の概要
所得税は、個人の1年間の所得を種類ごとに分類して計算します。主な所得には、給与所得・事業所得・不動産所得・譲渡所得などがあります。
そして、これらのうち「総合課税の対象となる所得」については、赤字(損失)が出た場合に他の黒字(所得)と相殺することができます。これを「損益通算」といいます。
今回のように不動産所得が赤字となった場合、その赤字は給与所得と通算することができるため、課税される所得が少なくなり、結果として所得税や住民税が軽減される可能性があります。
2.不動産所得に係る損益通算の特例の概要
ただし、不動産所得については、いくつかの損益通算が制限されるケースがあります。
たとえば、次のような場合には、赤字が出ても他の所得と通算できません:
- 不動産の取得にかかる借入金の利子のうち「土地の取得部分に対応する利子」
- いわゆる「税金対策」を目的として節税商品を購入したような場合(例:特定の節税型不動産投資)
ご相談のケースでは、物件を取得するための借入金のうち、土地部分に対応する10万円の利子が赤字に含まれているとのことですが、この利子分は損益通算の対象にはならず、赤字から除かれてしまいます。
一方で、建物の減価償却費や修繕費、管理費など、通常の経費として認められる支出については、問題なく損益通算が可能です。
◆まとめ◆
不動産所得の赤字は、一定の条件を満たせば、パート収入などの給与所得と損益通算できます。ただし、土地取得に対応する借入金の利子は通算できないため、注意が必要です。
今回のご相談では、赤字全体のうち10万円は損益通算の対象外ですが、残りの90万円は通算可能と考えられます。適切に申告することで、税負担を軽減できる可能性がありますので、ぜひ確定申告を前向きにご検討ください。